耳寄りなお話(Tantalizing Tidbit) 14

Devil tileとGargoyle

 前回触れたdevil tile とgargoyle ですが、今回は両者の役割を比較してみます。

 devil tileと言われる鬼瓦は鬼面をしていることが多く、その役割は「魔除け」です。瓦屋根の棟端に取り付けることで建物全体を守ってくれることを願ってとりつけられたもので、怖しいものを置くことで怖しいものから守るという発想のもと設置されたそうです。

 しかし7世紀までの寺院建築では、大棟の末端を縁取る瓦は軒丸瓦と同様の蓮華文その他の紋様で飾られていました。鬼の顔を表わすものになっていったのは8世紀後半になってからで、後に総称して鬼瓦と呼ばれるようになりました。法隆寺で発屈された日本最古の鬼瓦も蓮華門鬼瓦です。

 松本城の渡り櫓に展示されている鬼瓦も鬼面の他に城主の家紋をデザインしたものもありますね。犬山城には桃の形をした鬼瓦がありますが、桃は水分が多く火事の時の火除けとしての役割もあったそうですし、また桃には不老不死の力があると信じられ、その強い生命力ゆえに魔除けとして使われてきたとも言われています。そういえば七福神の一つ「寿老人」は長寿の象徴として桃を持っていますね。(犬山城の桃の瓦は見にくい場所にあるのでよく注意しないと気が付きません)。

 一方gargoyleはグロテスクな怪物や人の顔をし、教会や大聖堂の壁部に突き出た形で取り付けられています。13世紀頃に建てられ始めた大聖堂が次第に豪華さを増し、高さを競うようになり(前回記述)、壁面を守るため屋根から雨水を集めて壁から離して水を落とす雨樋が必要となったために取り付けられたもので、怪物の口は雨水を吐き出すための役割を担っていました。

 何故グロテスクな怪物の形になったかの理由としては面白い由来話があります。昔セーヌ川に近い洞穴に蛇のような長い首を持ち、羽を生やしたgargouilleと呼ばれる竜が棲んでいて火を噴いて火事を起こしたり、水を吹き出して洪水を起こしたりするなどの悪事を働いていました。ルーアン大司教が竜を退治し、火あぶりの刑に処しましたが竜の首が焼け残ったため、その首を聖堂に祭ったことがガーゴイルの姿のモデルとなったとも言われています。

 雨樋の役割は日本の鬼瓦にはないのが相違点ですが、奇怪な怪物は鬼瓦同様大聖堂を悪霊から守る役割も担っていたそうですのでこれは類似点ですね。

英語のgargoyleは仏語の gargouilleに由来し、もともとは「のど」を意味するラテン語のgurgulioを起源とする言葉です。東大寺南大門の金剛力士像を見てガーゴイルを連想する外国人もいると聞いたことがありますが、日本人にはない発想で面白いです。